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独立してからは幸いなことに切れ間なく仕事があり、働き方のリズムがなかなかつかめなかったのもあり、山へ向かわない生活になってしまった。このままではいけないと思い、リハビリとしてほぼ2年ぶりの登山へ。とはいうものの、なぜいきなりテントを背負う山旅にしてしまったのか。同行は変わらずSくんです。

その昔、八ヶ岳に行く計画をひとりで立てては、いつも流れていたような記憶が蘇る。だいたいが悪天候のせいである。でも来ればなんとかなることがわかる。

深夜バスで到着した麦草ヒュッテから登りはじめ、早々に高見石小屋に着く。まだ朝の8時過ぎ。Sくんは「眠い」と言い残し寝た。寝たぞ。小屋の方に「時間があるならニュウに登るといいですよ」と言われ、白駒池を経由してニュウに登る、予定より遠回りのルートに変更。幕営地の黒百合ヒュッテを目指します。

白駒池はそんなに大きい池ではないはずですが、対岸がギリギリ見える程度の深い霧。北八ヶ岳は池と湿原が多く、とても豊かな景色に溢れている。雨や霧で満ちていても、飽きない山というのはそれはそれは素晴らしい。と、登りながら知ることになるぐらい、下調べをせずに来ている。そんな山旅があってもいい。

ニュウではガスで何も見えず、さっさと通過する。その直後に事前の天気予報のとおり、雨が止み晴れ間が見え始めた。陽が差し始めると途端に温かくなる。太陽は偉大だなぁ……。

黒百合ヒュッテに到着して遅い昼食を食べ、テントを張って昼寝して、気がついたら夜になっていたので、夕飯も食べ終える。日頃の運動不足もあって心肺がまだ本調子ではないためか、若干高山病気味で頭痛が治まらない。ので、2日目早朝の天狗岳往復は個人的に辞退し、申し訳ないが、Sくんだけで行ってもらうことに。

インフレータブルマットをテント設営時にどっか草むらに転がしたのか、行方不明のまま水よけのすのこのほぼ上で寝たことで、体が痛い。テントから這い出ると、天狗岳を往復して帰ってきたSくんがもう朝飯を食っている。とりあえず先行者みんなごぼう抜きしたらしい。憧れる。

宿泊客を送り出し、次のお客さん達を迎える準備をするまでの自由時間なのか、小屋の方達が外に出てきて、みんなで天気を絶賛している。「暑くもなく寒くもなく、今シーズン最後の奇跡的な天気」と太鼓判を押すほどの快晴。いい日に来れて本当に有難い。

山には老若男女いろんな人がいる。それぞれがその山にいろんな想いを抱いて登ってくる。当たり前のことなんだけど、営みとして面白いし、とても素敵だ。体力が無いとか、時間が無いとか、ウダウダ言ってないでとりあえず登りに来ちゃえばそれでいいんだよな、と2年ぶりの山に気持ちが軽くなった。そもそもSくんにひたすら誘われてのことなのでそこは感謝しか無いですね。

もうあとは14時のバスで帰るだけ。白駒池は昨日と変わっていい景色。2日間で麦草ヒュッテ、高見石小屋、白駒荘、黒百合ヒュッテ、青苔荘、5つも小屋を巡っている。ここらへんは冬、雪山登山入門にも来やすいのかもしれない。もう少し体力を戻してからそういうことも考えたい。今年はまだシーズンがあと少しあるので、あとひと山ふた山行きたいところ。よい山旅でした。